日本文学史古典(平安・鎌倉・江戸)と近代の代表作・作者
文学史(ぶんがくし)とは、いつ・だれが・どんな作品を書いたかという、文学の歴史のことです。国語のテストでは、作品名とその作者を結びつける問題がよく出ます。作品・作者・時代をセットで覚えると、整理しやすく忘れにくくなります。
古典文学(古文の代表作)
古典文学は、主に奈良・平安・鎌倉・室町・江戸の各時代に分けて整理できます。『源氏物語』(紫式部)と『枕草子』(清少納言)は、どちらも平安時代の宮廷で書かれた作品で、テストでもよく対比されます。『源氏物語』は長編物語、『枕草子』は随筆(エッセイ)です。
奈良時代
| 作品 | 作者 | ポイント |
|---|---|---|
| 古事記 | 太安万侶 | 現存する最古の歴史書。稗田阿礼が語り、太安万侶が書きとめた |
| 日本書紀 | 舎人親王 | 日本最初の勅撰の歴史書。舎人親王らが編さんした |
| 万葉集 | 大伴家持 | 現存最古の和歌集。最終的な編さん者は大伴家持とされる |
『古事記』『日本書紀』は歴史書、『万葉集』は現存する最古の和歌集です。この3つは奈良時代にまとめられました。
平安時代
| 作品 | 作者 | ポイント |
|---|---|---|
| 源氏物語 | 紫式部 | 平安時代の長編物語。世界最古級の長編小説とされる |
| 枕草子 | 清少納言 | 平安時代の随筆。「をかし」の美意識で知られる |
| 土佐日記 | 紀貫之 | 平安時代の日記文学。仮名で書かれた最初の日記 |
| 古今和歌集 | 紀貫之 | 最初の勅撰和歌集。紀貫之らが編さんし、仮名序を書いた |
| 蜻蛉日記 | 藤原道綱母 | 女性が仮名で書いた最初の日記文学 |
| 和泉式部日記 | 和泉式部 | 和歌を中心にした平安の日記文学 |
| 紫式部日記 | 紫式部 | 宮中でのできごとをつづった日記。清少納言への批評もある |
| 更級日記 | 菅原孝標女 | 『源氏物語』にあこがれた少女時代から晩年までの回想 |
平安時代は仮名文字が広まり、女性による日記文学や物語が数多く生まれました。『土佐日記』(紀貫之)は、男性が女性のふりをして仮名で書いた日記としても有名です。
鎌倉時代
| 作品 | 作者 | ポイント |
|---|---|---|
| 徒然草 | 兼好法師 | 鎌倉時代末の随筆。吉田兼好(兼好法師)の作 |
| 方丈記 | 鴨長明 | 鎌倉時代の随筆。「ゆく河の流れは絶えずして」で始まる |
| 新古今和歌集 | 藤原定家 | 鎌倉初期の勅撰和歌集。藤原定家らが編さんした |
| 山家集 | 西行 | 平安末〜鎌倉初期の歌僧・西行の家集。桜と月の歌で知られる |
| 金槐和歌集 | 源実朝 | 鎌倉幕府三代将軍・源実朝の歌集 |
| 十六夜日記 | 阿仏尼 | 訴訟のため京から鎌倉へ下る旅をつづった日記 |
『徒然草』(兼好法師)と『方丈記』(鴨長明)は、『枕草子』と合わせて「古典三大随筆」と呼ばれます。合わせて覚えておくと便利です。
室町時代
| 作品 | 作者 | ポイント |
|---|---|---|
| 風姿花伝 | 世阿弥 | 能の芸術論。「初心忘るべからず」で知られる |
江戸時代
| 作品 | 作者 | ポイント |
|---|---|---|
| 奥の細道 | 松尾芭蕉 | 江戸時代の俳諧紀行文。松尾芭蕉の東北・北陸の旅 |
| 日本永代蔵 | 井原西鶴 | 町人の金もうけを描いた浮世草子 |
| 曾根崎心中 | 近松門左衛門 | 人形浄瑠璃の脚本。実際の事件をもとにした世話物 |
| 南総里見八犬伝 | 滝沢馬琴 | 八人の犬士が活躍する長編読本。曲亭馬琴ともいう |
| 東海道中膝栗毛 | 十返舎一九 | 弥次さん喜多さんの旅を描いた滑稽本 |
| 雨月物語 | 上田秋成 | 怪異をあつかった読本。「浅茅が宿」などを収める |
| おらが春 | 小林一茶 | 小林一茶の俳文集。素朴であたたかい句風 |
| 古事記伝 | 本居宣長 | 『古事記』の研究書。国学を大成した |
『奥の細道』(松尾芭蕉)は、俳句(俳諧)をまじえた紀行文(旅の記録)です。江戸時代には、井原西鶴の浮世草子、近松門左衛門の人形浄瑠璃など、町人が楽しむ文学もさかんになりました。
近代文学(明治以降の代表作)
明治時代以降の近代文学では、一人の作家が複数の代表作を残していることが多いのが特徴です。例えば夏目漱石は『坊っちゃん』『吾輩は猫である』『こころ』、芥川龍之介は『羅生門』『蜘蛛の糸』、太宰治は『走れメロス』『人間失格』を書きました。作家ごとに作品をまとめて覚えると効率的です。
| 作品 | 作者 | ポイント |
|---|---|---|
| 学問のすゝめ | 福沢諭吉 | 福沢諭吉の啓蒙書。「天は人の上に人を造らず」 |
| 浮雲 | 二葉亭四迷 | 言文一致体で書かれた最初の近代小説とされる |
| 金色夜叉 | 尾崎紅葉 | 貫一とお宮の物語。熱海の海岸の場面で知られる |
| たけくらべ | 樋口一葉 | 樋口一葉の小説。明治の下町の少年少女を描く |
| にごりえ | 樋口一葉 | 樋口一葉の短編小説。銘酒屋で働く女性の悲劇 |
| 高野聖 | 泉鏡花 | 幻想的な作風で知られる泉鏡花の小説 |
| 五重塔 | 幸田露伴 | 塔の建築にすべてをかける大工・十兵衛の物語 |
| 坊っちゃん | 夏目漱石 | 夏目漱石の小説。松山の中学校が舞台 |
| 吾輩は猫である | 夏目漱石 | 夏目漱石の小説。猫の視点で人間社会を描く |
| こころ | 夏目漱石 | 夏目漱石の小説。「先生」と「私」の物語 |
| 草枕 | 夏目漱石 | 「智に働けば角が立つ」で始まる夏目漱石の小説 |
| 三四郎 | 夏目漱石 | 熊本から上京した青年・三四郎を描く |
| 舞姫 | 森鷗外 | 森鷗外の小説。ドイツ留学を背景にした作品 |
| 高瀬舟 | 森鷗外 | 森鷗外の短編小説。安楽死をめぐる物語 |
| 山椒大夫 | 森鷗外 | 安寿と厨子王の物語をもとにした森鷗外の小説 |
| 破戒 | 島崎藤村 | 島崎藤村の自然主義小説 |
| 夜明け前 | 島崎藤村 | 「木曽路はすべて山の中である」で始まる長編 |
| 若菜集 | 島崎藤村 | 島崎藤村の第一詩集。近代詩の出発点とされる |
| 蒲団 | 田山花袋 | 自分をありのままに描いた自然主義の小説 |
| 田舎教師 | 田山花袋 | 若い教師の短い生涯を描いた田山花袋の小説 |
| 羅生門 | 芥川龍之介 | 芥川龍之介の短編小説。『今昔物語集』に取材 |
| 蜘蛛の糸 | 芥川龍之介 | 芥川龍之介の短編小説。お釈迦さまと罪人カンダタ |
| 鼻 | 芥川龍之介 | 長い鼻に悩む僧・禅智内供の物語 |
| 杜子春 | 芥川龍之介 | 仙人になろうとした青年・杜子春の物語 |
| 城の崎にて | 志賀直哉 | 「小説の神様」と呼ばれた志賀直哉の心境小説 |
| 暗夜行路 | 志賀直哉 | 志賀直哉唯一の長編小説 |
| 友情 | 武者小路実篤 | 白樺派の中心人物・武者小路実篤の小説 |
| 恩讐の彼方に | 菊池寛 | 青の洞門を掘る僧と、あだ討ちを誓う青年の物語 |
| 蟹工船 | 小林多喜二 | 過酷な労働を描いたプロレタリア文学の代表作 |
| 走れメロス | 太宰治 | 太宰治の短編小説。友情と信実を描く |
| 人間失格 | 太宰治 | 太宰治の小説。「恥の多い生涯を送って来ました」 |
| 斜陽 | 太宰治 | 没落していく貴族の一家を描いた太宰治の小説 |
| 雪国 | 川端康成 | 「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」 |
| 伊豆の踊子 | 川端康成 | 旅芸人の踊子と学生の出会いを描く |
| 山月記 | 中島敦 | 中島敦の小説。虎になった李徴の物語。中国古典に取材 |
| 銀河鉄道の夜 | 宮沢賢治 | 宮沢賢治の童話。ジョバンニとカムパネルラの旅 |
| 注文の多い料理店 | 宮沢賢治 | 宮沢賢治の童話集。山猫の料理店の物語 |
| 風の又三郎 | 宮沢賢治 | 転校生・高田三郎をめぐる宮沢賢治の童話 |
| みだれ髪 | 与謝野晶子 | 与謝野晶子の歌集。情熱的な短歌で知られる |
| 一握の砂 | 石川啄木 | 石川啄木の歌集。三行書きの短歌 |
| 邪宗門 | 北原白秋 | 北原白秋の第一詩集。あざやかな色彩感覚 |
| 月に吠える | 萩原朔太郎 | 口語自由詩を確立した萩原朔太郎の詩集 |
| 道程 | 高村光太郎 | 「僕の前に道はない」で知られる高村光太郎の詩集 |
| 智恵子抄 | 高村光太郎 | 妻・智恵子への思いをつづった詩集 |
| 山羊の歌 | 中原中也 | 「汚れつちまつた悲しみに」を収める中原中也の詩集 |
| 赤光 | 斎藤茂吉 | アララギ派の歌人・斎藤茂吉の歌集 |
| 山椒魚 | 井伏鱒二 | 岩屋から出られなくなった山椒魚の物語 |
現代文学(戦後の代表作)
第二次世界大戦後に書かれた作品も、文学史ではよく取り上げられます。
| 作品 | 作者 | ポイント |
|---|---|---|
| 二十四の瞳 | 壺井栄 | 小豆島の分教場の先生と十二人の子どもたちの物語 |
| 金閣寺 | 三島由紀夫 | 金閣寺放火事件をもとにした三島由紀夫の小説 |
| 潮騒 | 三島由紀夫 | 伊勢湾の島を舞台にした青春小説 |
| 砂の女 | 安部公房 | 砂の穴の家に閉じこめられた男を描く |
| 黒い雨 | 井伏鱒二 | 広島の原爆を描いた井伏鱒二の小説 |
| 点と線 | 松本清張 | 社会派推理小説の代表作 |
文学史の覚え方・注意点
- 作品・作者・時代をセットで覚える:「作品名→作者→時代」をまとめて整理すると、ばらばらに暗記するより定着します。
- 作家ごとに作品をまとめる:近代の作家は複数の代表作をもつことが多いので、作家を軸に作品を並べて覚えましょう。
- まぎらわしい組み合わせに注意:『源氏物語』(紫式部)と『枕草子』(清少納言)のように、同じ時代の似た作品は作者を取り違えやすいので、対にして整理しましょう。
文学史は、代表的な作品から繰り返し確認することで確実に身についていきます。作品・作者・時代をセットで、少しずつ覚えていきましょう。

